rasterize
脳内のイメージを出力するための変換とかそんなイメージ
2007'05.25.Fri
ということでその2、です。
あと2つ分で完結。
一応出来ましたが、一気にアップするのもアレなので。
あと2つ分で完結。
一応出来ましたが、一気にアップするのもアレなので。
青空の次に視界に飛び込んできたのは、それはそれは立派な建物でした。息を呑むほどに、美しい神殿は気品高くそびえていました。普段なら足を踏み入れるのに怖気づきもしたでしょうが、今のエレオノーレはそうではありませんでした。汚れた脚で跡を残しながら、転がる様に前へ、前へ。
爽やかな風が体の両端をすり抜けて行きます。清い空気が、体の隅々まで染み込んでエレオノーレはこれまでの自分の汚れが全て浄化されていくかのように感じました。走馬灯のように、幸せな思い出が駆けて行きます。しかしその先にあるのは最期の瞬間ではなく、幸せだという確信がありました。仲間に申し訳ないという気持ちが生まれましたが、彼等の分も自分が幸せになれるのなら、まだ。今はそう思って無理矢理納得することにします。壁画の美しさに心を打たれ、細やかな装飾に感銘を受けました。このような素晴らしいものが意思ある者の手で作られたのに、同じ意思ある者である自分の手はどれだけ血で汚れているのでしょう。様々な思いが悲しさを呼びますが、様々な思い出もまた悲しみの上を走っていきました。広い神殿の内部をひたすら直感の望むままに足を進めて行きす長い長い回廊を抜けると、空間は突如広がりを見せました。
奥に祭壇が見えます、その手前の階段に人影がありました。一瞬背筋が凍りましたが、それもすぐに溶けました。
「光神……?」
プラチナの髪がさらりと流れたのが光の加減で遠目にでもよくわかりました。よくは見えないのに、その瞳の色は突き抜けるほど暖かく、陽気にあてられたみたいにぽかぽかしていました。
「ああ、その通り」
声は小さかったのに、驚くほどよく通り、エレオノーレの耳にまで届きました。驚きで固まるエレオノーレをよそに、光神ルダルトはぽつりと漏らしました。
「見苦しいな」
「え?」
確かに見て見れば、ただでさえ飾り気がなく、機動性を重視した軍服がさらに汚れの限りを尽していました。これまでの道のりを思いだして、気分が落ち込みます。あれほどに美しかった神殿を、血で汚してしまったのですから。
パチン、と指の鳴る音が聞こえたかと思うと、一瞬視界が光で覆われました。そしてその次の瞬間にはエレオノーレの服は全く違うものに変わっていました。あんなに汚れていた肌すら綺麗になっていました。服を良く見て見ると、橙色のリボンが要所要所にあしらわれた白いシャツ。腰から下は揃いで巻いているように見せた黄色のスカートで覆われ、長さがちぐはぐな靴下のデザインも服と揃えられ、動く度にふわふわのスカートと靴下にあしらわれたリボンが踊ります。靴も茶色のパンプスに変わっていました。動きを止めても足元に風が通って広がったスカートの裾がなびきます。それよりも、素足を風に晒す感覚が居心地の悪い感覚を与えました。
「これは、あなたの趣味ですか?」
「いや……そういうわけではない。ただ、汚れたままでいられるのは心証がよくないからね。それに女性はそのように美しい格好をしている時が一番映えて見える」
恥ずかしげもなくさらりと言ってのけられて、エレオノーレは反応に困って一人戸惑っていました。
「……もっと近くにきたらどうだ?」
続けて投げかけられた言葉が、とても尊いものに聞こえました。
「はい、そうさせて頂きます」
一歩踏み出す度に、裾がなびいて、ふわりふわり、風のように踊りました。初めこそ違和感を感じていましたが、それに慣れさえすれば今度はその感触が楽しく、気が付けば踊りだしたいほどに足取りは軽くなっていた。
「不思議。そっきまであんなに疲れてたのに」
「さっき体力も回復させておいたからな」
エレオノーレは小走りでルダルトの前に進み出て、頭を下げた。
「ありがとうございます」
「いい。あのままで目の前にいられても、ことらが困るだけだったからな」
「いいえ、他にも、いろいろあなたには感謝しているのです」
ルダルトの片眉が上がった。エレオノーレが、嬉しそうに口を開く。
「まず、この神殿がそうですわ。とても、とても、救われました」
来る人に幸せな記憶を与えるのは、ルダルト自らやっていること。普段はレダルトの神殿と比べてこちらを選ぶ人が多い最中、このような感謝されたことは、もしかすると初めてかもしれない。
「こんな神殿が世界中にあれば良いのに。ここだけではなく闇神のものも。幸せな記憶は怒りを沈め、辛い記憶は決断を押し留めますもの」
そこで、言葉は一瞬途切れました。先ほどまであんなに楽しそうだったエレオノーレの様子に影が落ちます。
「争いもきっとなくなるでしょう」
ルダルトは、何も言いませんでした。エレオノーレは、溢れそうになる涙を必死に飲みこんでいました。
「何故あなたたちは黙って見ていられるのですか?神が少しでも手を差し伸べれば戦争なんてすぐに終わるのに」
「愚かな人間のために差し出す手などあるものか」
ルダルトの声が急に冷えて、エレオノーレは数歩後ずさりました。不意にこぼれた涙を拭って、エレオノーレは睨むほど強い眼差しでルダルトを見据えました。
「あります。あなたにはちゃんと二本の腕がついてます」
強く反論されたことに驚いて、ルダルトは息を飲みました。
「暇つぶしの代わりに一本くらい差し出してもいいんじゃないんですか?」
この雰囲気ですから、表に出しはしませんが心は笑っていました。エレオノーレは尚続けます。
「何も知らない子供を愚かだと笑って、彼等に何も教えないのは親の怠慢でしょう」
ルダルトの表情が一瞬凍てつきました。エレオノーレが、恐れながらも強く向かってきていることが気配でわかりました。話すのが楽しい相手と出会うのはルダルトにとって相当久しいことでした。
討論は長く続きました。濃密な会話の内容が二人にそう感じさせていただけかもしれません。充実した時間ほど早足で駆けて行くものです。気がつけばつまらない揚げ足取りにすら、二人して真剣になっていました。
爽やかな風が体の両端をすり抜けて行きます。清い空気が、体の隅々まで染み込んでエレオノーレはこれまでの自分の汚れが全て浄化されていくかのように感じました。走馬灯のように、幸せな思い出が駆けて行きます。しかしその先にあるのは最期の瞬間ではなく、幸せだという確信がありました。仲間に申し訳ないという気持ちが生まれましたが、彼等の分も自分が幸せになれるのなら、まだ。今はそう思って無理矢理納得することにします。壁画の美しさに心を打たれ、細やかな装飾に感銘を受けました。このような素晴らしいものが意思ある者の手で作られたのに、同じ意思ある者である自分の手はどれだけ血で汚れているのでしょう。様々な思いが悲しさを呼びますが、様々な思い出もまた悲しみの上を走っていきました。広い神殿の内部をひたすら直感の望むままに足を進めて行きす長い長い回廊を抜けると、空間は突如広がりを見せました。
奥に祭壇が見えます、その手前の階段に人影がありました。一瞬背筋が凍りましたが、それもすぐに溶けました。
「光神……?」
プラチナの髪がさらりと流れたのが光の加減で遠目にでもよくわかりました。よくは見えないのに、その瞳の色は突き抜けるほど暖かく、陽気にあてられたみたいにぽかぽかしていました。
「ああ、その通り」
声は小さかったのに、驚くほどよく通り、エレオノーレの耳にまで届きました。驚きで固まるエレオノーレをよそに、光神ルダルトはぽつりと漏らしました。
「見苦しいな」
「え?」
確かに見て見れば、ただでさえ飾り気がなく、機動性を重視した軍服がさらに汚れの限りを尽していました。これまでの道のりを思いだして、気分が落ち込みます。あれほどに美しかった神殿を、血で汚してしまったのですから。
パチン、と指の鳴る音が聞こえたかと思うと、一瞬視界が光で覆われました。そしてその次の瞬間にはエレオノーレの服は全く違うものに変わっていました。あんなに汚れていた肌すら綺麗になっていました。服を良く見て見ると、橙色のリボンが要所要所にあしらわれた白いシャツ。腰から下は揃いで巻いているように見せた黄色のスカートで覆われ、長さがちぐはぐな靴下のデザインも服と揃えられ、動く度にふわふわのスカートと靴下にあしらわれたリボンが踊ります。靴も茶色のパンプスに変わっていました。動きを止めても足元に風が通って広がったスカートの裾がなびきます。それよりも、素足を風に晒す感覚が居心地の悪い感覚を与えました。
「これは、あなたの趣味ですか?」
「いや……そういうわけではない。ただ、汚れたままでいられるのは心証がよくないからね。それに女性はそのように美しい格好をしている時が一番映えて見える」
恥ずかしげもなくさらりと言ってのけられて、エレオノーレは反応に困って一人戸惑っていました。
「……もっと近くにきたらどうだ?」
続けて投げかけられた言葉が、とても尊いものに聞こえました。
「はい、そうさせて頂きます」
一歩踏み出す度に、裾がなびいて、ふわりふわり、風のように踊りました。初めこそ違和感を感じていましたが、それに慣れさえすれば今度はその感触が楽しく、気が付けば踊りだしたいほどに足取りは軽くなっていた。
「不思議。そっきまであんなに疲れてたのに」
「さっき体力も回復させておいたからな」
エレオノーレは小走りでルダルトの前に進み出て、頭を下げた。
「ありがとうございます」
「いい。あのままで目の前にいられても、ことらが困るだけだったからな」
「いいえ、他にも、いろいろあなたには感謝しているのです」
ルダルトの片眉が上がった。エレオノーレが、嬉しそうに口を開く。
「まず、この神殿がそうですわ。とても、とても、救われました」
来る人に幸せな記憶を与えるのは、ルダルト自らやっていること。普段はレダルトの神殿と比べてこちらを選ぶ人が多い最中、このような感謝されたことは、もしかすると初めてかもしれない。
「こんな神殿が世界中にあれば良いのに。ここだけではなく闇神のものも。幸せな記憶は怒りを沈め、辛い記憶は決断を押し留めますもの」
そこで、言葉は一瞬途切れました。先ほどまであんなに楽しそうだったエレオノーレの様子に影が落ちます。
「争いもきっとなくなるでしょう」
ルダルトは、何も言いませんでした。エレオノーレは、溢れそうになる涙を必死に飲みこんでいました。
「何故あなたたちは黙って見ていられるのですか?神が少しでも手を差し伸べれば戦争なんてすぐに終わるのに」
「愚かな人間のために差し出す手などあるものか」
ルダルトの声が急に冷えて、エレオノーレは数歩後ずさりました。不意にこぼれた涙を拭って、エレオノーレは睨むほど強い眼差しでルダルトを見据えました。
「あります。あなたにはちゃんと二本の腕がついてます」
強く反論されたことに驚いて、ルダルトは息を飲みました。
「暇つぶしの代わりに一本くらい差し出してもいいんじゃないんですか?」
この雰囲気ですから、表に出しはしませんが心は笑っていました。エレオノーレは尚続けます。
「何も知らない子供を愚かだと笑って、彼等に何も教えないのは親の怠慢でしょう」
ルダルトの表情が一瞬凍てつきました。エレオノーレが、恐れながらも強く向かってきていることが気配でわかりました。話すのが楽しい相手と出会うのはルダルトにとって相当久しいことでした。
討論は長く続きました。濃密な会話の内容が二人にそう感じさせていただけかもしれません。充実した時間ほど早足で駆けて行くものです。気がつけばつまらない揚げ足取りにすら、二人して真剣になっていました。
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